ご挨拶

Greeting from director
いつまでも“sense of wonder”を

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
理事長 吉崎 智一

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会と日本耳鼻咽喉科感染症エアロゾル学会の統合により誕生した本学会もこれで3年目に突入です。臓器横断的で、clinicalはもとよりbasic & translational researchにおいてもアクティブな本学会の2023年4月から理事長を拝命しました。原渕初代理事長は「10年先の進歩と発展を見据えて新たな潮流の創出」を目的として非常に多くの試みを行われました。

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会において若手の登竜門となっていた奨励賞はそのまま継続発展しています。本分野において世界的にも傑出した業績を輩出した組織のリーダーに対する特別賞、現在第一線で活躍中のエースに対する学会賞、学会誌に投稿された秀逸論文オーサーに対する優秀論文賞、が創設されました。この3年、いずれも本当に趣旨に相応しい方々が受賞されました。これからも形骸化させることなく、世界で本学会のAward Sessionを企画しても恥ずかしくない受賞内容の表彰制度に発展させてゆきたいと考えています。

本学会は面的に網羅的横断的にであることに加え、深度的にもコモンディジーズから難病まで取り扱います。他学会では臓器特異的な疾患や病態像の解明や治療に主眼が置かれがちです。一方で、例えば鼻アレルギーから好酸球性副鼻腔炎、急性中耳炎からANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)、頭頸部癌微小環境から全身免疫動態、などは一見異なっているものが共通する原理から発生してくること、その中で似て非なる部分はどこか、など我々に内在する知的好奇心を揺さぶってきます。体系的に、そして大胆かつ繊細に物事を捉えることの重要性、研究の継続性の大切さを実感させてくれます。

幅広く実臨床に関連する活動は元より、未来の研究を担う人材の育成にも精力的に取り組んでいます。常設委員会として、医用エアロゾル研究推進委員会、三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス委員会、ICD講習会委員会に加え、基礎研究者育成委員会を設置しました。アドホック委員会も、鼻アレルギー診療ガイドライン委員会、小児急性中耳炎診療ガイドライン委員会(日本耳科学会・小児耳鼻咽喉科学会と合同)、急性扁桃炎・咽頭炎ガイドライン委員会(日本口腔咽頭科学会と合同)、上気道感染症対策・抗菌薬適正使用検討委員会、口腔アレルギー症候群診療ガイドライン委員会に加え、小児アレルギー性鼻炎診療手引き作成にも携わっています。

医療を取り巻く環境は臨床も研究も決して明るいとはいえません。しかし、嘆いたり、憂いたりするのは私たちの仕事ではありません。私たちの仕事は困難の中にも好機を見つけることです。現在の問題点は何か、なぜ解決できないのか、何があれば解決できるのか、常に考え続ける姿勢を大切に、「これは不思議だ」と気づくこと、そして他の研究者とその不思議を共有することの面白さを、それこそ感染させていける学会へと発展し続けることを目指して本学会の旗振り役を勤めさせていただきます。そして、今後も期を見てこのページもアップデートしてゆきます。まず第一報、理事長就任にあたりご挨拶申し上げます。(2023年4月30日記)