ご挨拶

10年先の進歩と発展を見据えて

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
理事長 原渕保明

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会(Japan Society of Immunology, Allergology and Infection in Otorhinolaryngology: JIAIO)は,日本耳鼻咽喉科関連学会の中で,臓器別に構成された他学会とは異なり,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域及びその関連領域の免疫学,アレルギー学及び感染症学の網羅的・横断的な進歩と発展を図るとともに,会員相互の交流及び親睦を促進することを目的として,約40年の歴史を有する日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会(JIAO)と約50年の歴史を有する日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会(JSIAO)の両者が2020年に発展的に統合し,発足した最も新しい学会です。

私は本学会の初代理事長として,前身の両学会の伝統を継承すると共に,学術・診療レベルの向上,横断的領域の融合化,国際化推進,若手・後進の育成,女性医師の参画を目的に,会員のモチベーションが高まる新たな魅力的な学会企画を多く掲げて,積極的な学会運営を行なっていきたいと考えております。

本学会が網羅する分野・疾患としては,1)鼻アレルギー,口腔アレルギー症候群,喉頭アレルギーを代表とするアレルギー疾患,2)中耳炎,副鼻腔炎,咽頭・扁桃炎,喉頭炎,頸部膿瘍などの感染症,3)好酸球性中耳炎,好酸球性鼻副鼻腔炎などの好酸球性炎症疾患,4)近年,人口の高齢化と共に増えてきたANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)や肉芽腫性血管炎,IgG4関連疾患,扁桃病巣疾患(tonsil-induced autoimmune/inflammatory syndrome: TIAS)といった自己免疫・自己炎症性疾患,5)このような疾患の病態解明・治療に繋がる上気道粘膜免疫学,6)今や癌治療の大きな位置を占めているがん免疫療法,7)その基礎となる分子腫瘍学・腫瘍免疫学,などが挙げられます。これらの分野・疾患は互いに研究方法や診療方法などで共通するものがあり,それらを横断的に研究し,診療に生かすことが本学会の目的の大きな柱となっています。中でも,今や国民的疾患となったスギ花粉症を代表とする鼻アレルギーに関する診療や基礎的研究は,厚生労働省が掲げる「アレルギー疾患対策基本法」の根幹を成しています。また,上気道感染症は,同じく厚生労働省が掲げる「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」の対象疾患として最も頻度が多く,重要な位置を占めています。加えて,多くの頭頸部癌が対象となるがん免疫療法は,従来の「がん対策基本法」の理念に最も合致する治療法といえます。したがって,これらの疾患から国民の健康を守り,回復に導くためには,この領域を専門とする本学会会員の果たす役割は極めて大きいと言えます。

このような背景から,これらの疾患に対する診療ガイドライン作成を目的とした5つのアドホック委員会を継承または新規に立ち上げました。前身のJIAOまたはJSIAOから継承した3つの委員会,1)鼻アレルギー診療ガイドライン委員会,2)小児急性中耳炎診療ガイドライン委員会(日本耳科学会,小児耳鼻咽喉科学会と合同),3)急性扁桃炎・咽頭炎ガイドライン委員会(日本口腔・咽頭科学会と合同),に加えて,新たなアドホック委員会として,4)上気道感染症対策・抗菌薬適正使用検討委員会と,5)口腔アレルギー症候群診療ガイドライン委員会を新設しました。これらのアドホック委員会の他に,常設委員会として6)医用エアロゾル研究推進委員会,7)三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス委員会,8)ICD講習会委員会をJSIAOから継承し,設立しました。

本学会の新たな企画のひとつとして,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域及びその関連領域に関する免疫学,アレルギー学,及び感染症学の発展に貢献した会員を対象とする4つの賞を設けました。ひとつは,前身のJIAOから継承した「奨励賞」で,若手研究者の育成を目的とします。また,顕著な基礎研究または臨床研究の業績を有し,将来,本分野の発展に大いに貢献することが期待される会員を対象にした「学会賞」,さらに国際的に高く評価される卓越した基礎研究あるいは臨床研究の業績を有し,同分野における本邦の地位の向上に寄与した会員を対象とする「特別賞」を設けました。加えて,本学会誌に掲載された優秀な論文や症例報告を対象に,和文論文のみならず,将来の英文化学会誌を見据えて英文論文の2論文に「優秀論文賞」が与えられます。これらの賞を設けることによって,学術研究や診療に対する学会員のモチベーションの向上につなげたいと考えています。

学会運営の新たな試みとして,前身の両学会で行われていた8つの会務,庶務,財務,会則,学会誌編集,広報,渉外,社療,学術に加えて,企画,男女共同参画,国際化推進,将来構想を設立し,合計12の会務を組織しました。企画委員会,将来構想委員会では,それぞれ学会が掲げる中期的目標,長期的目標の企画と達成を目的に,新入会員の獲得,若手研究者・臨床医を対象としたセミナーの企画,基礎・臨床研究の統括・支援制度の確立,アレルギー疾患や癌に対する免疫療法認定医制度や上気道感染症に対する抗菌薬適正使用認定医制度,学会誌の国際誌化などの企画とその達成に取り組んで行きます。国際化推進委員会では,欧米の国際学会との連携,世界的トップランナーの招請,若手研究者・臨床医の海外留学支援などを行います。

男女共同参画は,本学会の大きな柱のひとつです。学会運営に女性を積極的に登用し,女性理事枠を設けました。また,常任幹事,委員会の委員長や委員にも女性を多数起用し,学会の発展に大いに貢献していただきます。キャリアアップを志す若手女性医師のロールモデルとしても活躍することを期待しています。

以上,新しく誕生した本学会を牽引する初代理事長としての抱負を述べさせていただきました。これらを達成するには,私のみならず,理事,監事,幹事を含めた執行部,そして会員の皆さま全員のご支援とご協力がなくてはなりません。多くの若い先生が喜んで参加するためには何が必要でしょうか? 皆さまの英智を結集し,10年先の進歩と発展を見据えて新たな潮流を創りあげることができればと決意を新たにしています。ご支援とご協力を重ねてお願い申し上げます。